私の執筆活動人生

(又信東京49号より)

私の執筆活動人生
佐藤忍さん(経済29回)

人生が全く予期しない方向に進んだという人は、世の中に珍しくないでしょうが、私の場合はその中でも極端な例ではないかと思います。大学時代まで、勉強に全くといってよいほど興味がもてず、本もほとんど読まなかった人間が、どういうわけか、研究書と分類されるような本を出版することを人生の中心的な目標とすることとなったのです。これまでに、2冊の著書を出版し、現在3冊目を執筆しています。

大学卒業後、入社した保険会社でシステム部門へ配属となり、5年目あたりで人工知能について研究する機会を得ました。そこで、認知心理学という学問に出会い、人間について知っていくことの楽しさに目覚めました。そこから、哲学や心理学などを勉強し始め、31歳の時に生命保険会社を退社し、本格的に執筆活動に取り組むことになりました。以降、プータロー生活、アルバイト、会社員を遍歴しながら、地道に研究・執筆を続けています。

研究内容は、関連することにいろいろ手を伸ばしていくにつれ広がっていき、結果的に1冊目は『伊勢神宮とトコヨの古代史』という、古代史の本の出版となりました。生命保険会社退社時には、古代史についてはほとんど何も知らないという状態でしたから、これも思わぬ展開といえるものです。日本人に関してのあるテーマを探っていく過程で、古代史までさかのぼる必要が出てきて、そこで偶然伊勢神宮に関する発見を得ました。そこから芋蔓式に研究を進めていった結果が、その出版となりました。

これまで、奈良時代初期より前の、伊勢神宮の成立過程については、文献資料・考古学的資料ともに極めて少なく、ほとんどわかっていない状態でした。私は、伊勢神宮は創祀から今の形になるまで、少なくとも7段階を経ていることを見出しました。三重県・奈良県・京都府に「元伊勢」と呼ばれる神社がありますが、それぞれがどういう位置づけにあるのかも論証しています。
私は、人間を理解するためには、まず赤ん坊からの発達過程を知る必要があると思い、当初の中心の研究対象は発達心理学でした。1冊目の出版後、その本来のところに戻り、『現代子ども・若者論考』という本を2冊目として出版しました。最近の子ども・若者にさまざまな問題が発生していますが、その最大の要因がどこにあるかを追究したものです。現代の子ども・若者の精神の根本的な部分が、どのような特徴を持ってきており、それがどのような問題につながっているかを論じています。

以上の2冊は、いずれも文芸社という出版社から共同出版という形で出版していますが、実質自費出版のようなものです。また、どちらも4百ページを超え、決して平易とは言い難い内容であるため、いろいろな人に読み切ってもらうのがなかなか難しいものでもあります。興味がおありの方は、少し大変かとも思いますが、お読みいただければと思います。1冊目は在庫が残りわずかとなっておりまして、本屋に注文していただいても、届くのに時間がかかるか、もしくは品切れになっているかもしれません。2冊目は、在庫に余裕があり、電子書籍(http://www.boon-gate.com/、分類は『学術・社会・教育』です)としても販売しています。

なお、現在執筆中のものは、日本庭園に関するものです。1冊目と2冊目の題名・内容は全く脈絡がありませんが、3冊目も相当毛色が異なったものとなります。これは、研究の成果というより、趣味でこれまでに日本庭園を5百ヶ所以上(1ヶ所に複数庭園があることも少なくないため、庭園数で言うと7百近く)回った経験をもとに、書き進めています。来年の半ばくらいでの出版を目指しています。